久しぶりの発表会、一曲を仕上げる感覚

12月は、私にとって10年以上ぶりの発表会に参加しました。
当日に向けて一曲を仕上げる難しさ、人前での演奏に向けて練習する意義について改めて考えた一カ月でした。
そして発表会当日は、おそらくこの日のことはいつまでも忘れないんだろうなぁと思う一日になりました。
12月は合計20時間
12月は、13日で20時間練習をしました。
発表会当日に向けて、かなり詰めて練習したつもりだったので、あれ?と思っていたら、
12月は発表会当日に弾く曲ばかりを弾いていて、11月のようにその日の気分での弾きたい曲や、月刊ピアノに載っている曲などはあまり弾いていませんでした。
なのでピアノを弾いたトータルの時間は11月と変わっていなかったようです。
レッスンは3回、計3時間のレッスンに行きました。
「ゾーンに入る」感覚、曲と距離を詰める作業
ここからはかなり感覚的な話を、自分が覚えておくために文章として残しておきます。
コツコツと練習を続けていると、難しくてよくつっかえていた箇所が、ある日からふっと弾けるようになってきました。
まさにゾーンに入ったような感覚でした。
発表会に向けて練習していたのは、ショパンの「雨だれの前奏曲」。
雨だれはそれほど曲も長くはなく、またテクニックやスピードに任せて弾くような曲ではなかったので、
毎回冷静に落ち着いて練習に取り組む、良い訓練になりました。
久しぶりにピアノを再開した時の曲として、我ながら曲の選択が良かったです。
また、曲を仕上げていく過程で、先生のレッスンの仕方がとても私にあっていて、
どう弾いたら自分が心地よいか、そのラインを探ってみようと言われました。
それが今回雨だれを練習していく、大きな指針になりました。
ピアノって自分のために弾くんだなと改めて再確認。
そして曲が仕上がっていくにつれ、どう弾くか、どのように弾きたいかをちゃんと理解して、「目を開いて」弾けている感覚がありました。
弾きたいイメージが、そのまま鍵盤に乗って音として耳に聞こえた時は、本当に嬉しかった。
徐々に、徐々に、曲との距離を詰めて、練習を重ねることで、少しずつお腹の奥深くに落とし込んでいく、という感覚でした。
抽象的過ぎますが……。
一曲を仕上げる、そして人前で演奏をする、という作業は本当に久しぶりで、
また、こんなに熱心に取り組んだことも過去にもなく、
この先曲を仕上げていく時には、このことをいつも思い出して、誠実に向き合っていきたいと思いました。
本番を想定した練習
いつからか本番に弱く、発表会では当日に考えられないようなミスをすることが悩みでした。
今回も、本番を想像しながら練習をするたび、昔の嫌な思い出がつい最近のことのように思い出されました。
できるだけ本番で落ち着いて弾けるように、今回初めて、椅子に座ってから弾き始めるまでのルーティンを決めてみました。
- ピアノの正面に書かれている「YAMAHA」の文字の、最初のAとMの間に座る
- ペダルの上に右足を置く
- 背筋を伸ばす
- 手を鍵盤の上に置く
- 息を吐く
- 楽譜の、最初の音を目で確認する。
- 息を吸う
- 弾き始める
このルーティンを、練習時に毎回やっていました。
これはかなり良かったと思います。本番でも(これやって、次はこれやって……)と考えているうちに、舞い上がっている気持ちが落ち着いて、
とても冷静に弾き始めることができました。
また、身体の使い方についても個人的な発見がありました。
曲にあわせて前後に身体を揺らしてしまうと、自分の演奏にのめり込み過ぎて、全く冷静になれない感覚があり、
前後ではなく、横に身体を流すイメージで練習しました。これは良かったです。
手の使い方も、パカパカと弾きながら上下させるのではなく、
手と鍵盤を吸い付きあわせておくイメージを持っておく(実際にべったりとくっつけるのではなく)と、
音を見失わず落ち着いて弾けることに気づきました。
このように本番のイメージをしながら練習をすると、いろんな発見をすることができました。
発表会当日

コロナのため、通っていた音楽教室を運営する会社が倒産しました。
行き場を失った生徒を助けるため、先生が個人でレッスンを始めてから、今回が初めての発表会でした。
そのため会場も小規模。密を避けるため、来場者も限定して、全体の時間も短め。
その分、手作りの、とても暖かい発表会になりました。
当日は私もスタッフとしてお手伝いをしていたので、バタバタしていて写真などを撮るのを忘れてしまったのが残念です。
とても小さい生徒さんや、まだまだ若い生徒さんが、一生懸命に練習の成果を披露する姿に、とても感動しました。
自分が学生のころにはあまり感じなかった気持ちでした。(年を取ったんだなぁとも思いました。)
ただ曲を弾くだけだった学生のころの発表会と違って、今回はしっかりと目的を持って当日を迎えました。
ひとつは、久しぶりの人前での演奏に向けて、しっかりと一曲に向き合い、曲をを仕上げるという経験をすること。
もうひとつは、聞いてくれるほかの生徒さんに、「雨だれ」って綺麗な曲だな、ショパンって素敵だなと、ちょっとでも思ってくれたら良いなぁということでした。
ピアノを再開して、すぐにこのような機会をもらって、こんなに練習の励みになるとは思っていませんでした。
本番の演奏は、ミスもなく、とても落ち着いて心地よく弾くことができました。
自分の中で、大きな成功体験をひとつ積むことができました。
先生との連弾も本当に楽しかった。スピードがとても速くなってしまって、お互いに笑いながら弾いていました。
先生にとって、自身が主催する第一回目の発表会。私にとっても、ピアノを再開して初めての発表会。
とても思い入れのある時間になりました。
たぶんピアノを続けていく中で、この日のことはきっとずっと忘れないだろうなぁと思います。
題名のない音楽会での、反田恭平さんと小林愛実さんの演奏

12月18日放送の題名のない音楽会で、昨年のショパン国際ピアノコンクールで見事な結果を出された、
反田恭平さんと小林愛実さんがゲストで出演されていました。
名前は知っていたものの、実際に演奏を聞いたことはなかったのですが、
番組内で、小林さんが「雨だれ」を演奏してくれました。
ショパンコンクールで演奏されていたとは知りませんでした。
私よりずっとお若いですが、とても憧れの演奏でした。感動しました。
発表会本番直前に、この放送があるなんて、なんて運命!!!
勝手に強く感動して、何度も録画を繰り返し見て、本番当日に家を出る前にも見ました。
おこがましくも自分の演奏の参考にさせてもらい、とても良い影響をもらいました。
次の曲と、次の目標

発表会が終わってから、練習を始めた曲は、
シューベルトの即興曲 ハ短調Op90の1。
月刊ピアノの「2022年に記念イヤーを迎える作曲家」の紹介ページで、
今年がシューベルトの生誕225年であることを知りました。
雑誌を見る前にこの曲を決めていたので、全くただの偶然ですし、225年って記念イヤーになるのか?
とも思いましたが、ここはもう、運命にシューベルトをやりなさいと導かれたに違いない。
と勝手に感動し、またコツコツと譜読みを始めています。
そして、新年に次の目標をたてました。
今年、12月にまた発表会があるなら、それに向けて、
ショパンの「英雄ポロネーズ」を練習する!!
「英雄ポロネーズ」は、題名のない音楽会で、反田恭平さんが演奏されていました。
ショパンの中でも、昔から憧れに憧れていて、いつか、いつか、弾きたいと思っている大好きな曲です。
反田さんの素晴らしい演奏を聞いて、昔からの憧れが再度揺り起こされました。
まだまだブランクがあって技術はないし、発表会で人様に聞いてもらえるレベルにならないかもしれない、そもそも発表会が今年も確実にあるかはわからない。
でも、何より自分のために、昔から憧れていたこの曲に挑戦したいと思っています。
今回の発表会でとても良い成功体験ができました。
奇しくも、この文章を書いている1月17日は、阪神淡路大震災から27年の日。
ピアノを弾ける平和な日常に感謝しつつ、今回得たことを胸に、今年もコツコツ、夢に向かってがんばりたいと思っています。
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